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展示会

 展覧会に時々行く。

 先月行ったのは、

・「メメント・モリと写真」at 東京都写真美術館

・「フィン・ユールとデンマークの椅子」at 東京都美術館

 

 先日観に行ったのが、

・「ジャン・プルーヴェ展」at 東京都現代美術館

 

 東京都写真美術館東京都現代美術館は、事務所移転の仕事をしていた時に現場だったことがある。写真美術館の方は2、3度展示を観に足を運んでいるのだが、そこまで満足感を得られていない。何年か前に観に行った、「長倉洋海写真展」は、講演があったので、それなり得られるものがあったのだけど、他はさほど印象に残らない展覧会だった。

 大して写真に詳しいわけでもないので、好きな写真家訊かれても答え難いが、セバスチャン・サルガド一択で良いかなとは思ってる。サルガドの写真だけはずっと観ていられる。写真家について調べても良いのだけど、美術ほどは興味が湧くことは無いと思う。自分自身もそれほど良い写真が撮れない。というより、魅力を感じないものを魅力的に撮ることが出来るとは思わない。

 

 一時期、フォトジャーナリズムの世界に興味あったけど、「DAYS JAPAN」の編集長だった広河隆一が、女性関係の不祥事を聞いた時は幻滅した。散々、人権を問題にしてきた人間がやる所業ではない。雑誌で取り上げていた問題や、写真を掲載していた写真家の仕事に傷がつくとは言わないが、広河氏のやっていた仕事は、全て偽善だったのだろうか?ここが正直分からない。

 「人権」や「正義」を口にする人間は信用出来ない、とは言わないが、それによって精神が高潔に保たれる保証など無いのじゃなかろうか。寧ろ、反作用だってあるかもしれない。性欲にはデモーニッシュな側面がある。おぞましい衝動と結びつくことだってある。慈善家が、ジョン・ゲイシーみたいな鬼畜の可能性もあるが、それによって慈善事業を定義するも違うだろう。

 

 社会運動の中で不祥事が発生すると、運動全体がいかがわしく見えることがあるが、はっきり言って、逆効果にしかならないパフォーマンスみたいなのもある。最近だと、環境活動家が、美術館絵ゴッホの「ひまわり」にトマト缶の中身をぶちまけた事件があったが、ナンセンス通り越して愚劣な行動にしか思えない。「政府は美術品を保護しても環境を保護しない」とか抜かしてるが、ゴッホの「ひまわり」に何の罪がある?

 少し前にあった類似の事件だと、同じく環境活動家が障碍者のフリをしてモナ・リザに近づいてケーキをぶちまけたなんてのもあった。美術鑑賞によって、環境が余計が悪化するとでも言いたいのだろうか?「環境テロリスト」なんて言葉は正直使いたくないのだが、わざわざ有名な作品を標的にしてるのは、悪趣味な話題作りにしか見えない。

 

■「メメント・モリと写真」at 東京都写真美術館

 

 「メメント・モリ」展は正直不満足な展示会だったが、サルガドの写真が数点展示されていた。アフリカで悲惨な状況を目にした後、報道写真から手を引いて、自然写真に活動の舞台を移したサルガドだが、彼が本質的に変わってしまったと感じることは特にない。今は農園で植林プロジェクトとかやっている。

institutoterra.org

 以前、写真美術館で開催していたサルガド展には行けなかったので、今度機会があれば足を運びたい。というより、余程観たい展示でなければ写真美術館には行く気がなくなってしまった。

 

■「フィン・ユールとデンマークの椅子」at 東京都美術館

 

 フィン・ユールのことは知らなかったのだが、家具作りには興味があったので、参考に見に行った。実際に椅子に座れるスペースも設けられていて、やはり座ってみないと分からないことがある。立ち上がりたくないくらい座り心地の良いものもあたので、高くても品質の良い椅子が欲しくなった。

 フィン・ユールの作品は、美しくて好感の持てるものが多かったが、他の家具デザイナーの作品も結構面白かった。クラフトマンシップと工業デザインの関係については、掘り下げたい題材ではある。

 

■「ジャン・プルーヴェ展」at 東京都現代美術館

 

 東京都現代美術館も改装工事の前に現場で行ったことがあるのだが、とにかく広かった覚えがある。純粋に展示を観に行ったのは初めてだったが、巨大なスペースを生かして、家一軒展示していた。残念ながら家の中には入れなかったのだが、展示全体に何となく不満も感じていた。家具に関しては、「フィン・ユール~」展で目にしたものほど魅力を感じられず、建築物にも違和感を感じてしまった。

 建築現場で散々プレファヴ小屋を利用してきたが。綺麗なところなんて殆ど見た覚えが無い。汚れた労働者が溜まってるのだから、当たり前だ。それと比べれば、この展示で見たプレファヴは美しく思えるのだが、あれは建築への関心よりも、イベント施工の目線で見た方が面白かったかもしれない。簡単に建てられて、簡単に解体できるシステムはイベント向きだと思う。

 最後の部屋で観たドキュメンタリー映像で腑に落ちたこともあったのだが、工業デザインに対して、自分がアンビヴァレントな感情を抱いているのが、あぶり出されてしまった。飾り気のない機能美を前にすると、上滑りする感情がある。ただ、建築デザインと施工を分けて考えないプルーヴェの価値観には共鳴出来るところがあった。